2019年03月08日(金)
- コラム
- 親子問題
自分の尊厳を取り戻すための「毒親」という言葉
皆様、こんにちは。吉田美希です。
本日は、「毒親」という言葉について考えてみたいと思います。
★クロリスにおける「毒親」という言葉の意味★
クロリスでは、「毒親」という言葉を「自分主体で親の再定義をして人生の主導権を自分に取り戻すための言葉」として使っています。
決して親を責めるため、罰するための言葉として使っているわけではありません。また、過去のことに執着して生きるための言葉として使っているわけでもありません。
たまに、弊所のクライアントの方々に対し、いつまでも過去のことに固執しているですとか、大人になってからも親のことを怖がっているのはおかしい等とおっしゃる方々がいらっしゃいますが、そのような言葉に対して、私は心から反論したいです。
★そもそも現在進行形のトラブルが起きている★
まず、ご相談にいらっしゃる方々は、大人になって経済的社会的精神的に自立した今でも、なお、親の行動によって迷惑を被っている方々です。
たとえば、
ご本人が明らかに拒否しているにもかかわらず、頻回の連絡をよこし、対応をしないといきなり職場や自宅に押しかけてきて、職場の上司や近所の人に対してご本人の悪口をいう
ご本人に無断で保証契約をしていたり、クレジットカードを作って使用したりし、いつのまにかご本人に経済的負担が生じている
配偶者の悪口を節度をわきまえずに繰り返したり、配偶者を一方的に悪者扱いし、夫婦の問題に介入し、離婚に追いやる
等、例をあげたらたくさんありますが、どれも現に今困っているケースです。
決して過去のことに執着しているのではなく、現在起きているトラブルを解決したいというだけです。ただ、そのトラブルが起こる背景として、長年の歪んだ親子関係がある、それが弊所にご相談にいらっしゃる方々が抱えている毒親問題です。
★親に対する恐怖心を持っているのは悪いことではない★
また、大人になってからも親を怖がるなんておかしい…という言われ方についても、反論したいです。
長年自分に恐怖を与え続けてきた人間に対し、自分が大人と言われる年齢に達したというだけの理由で、怖がらないでいられるようになるはずがありません。
いじめやハラスメントを自分にしてきた相手と会っても怖くないという人はいないと思います。
特に毒親のもとで育った方たちは、一番無力な時代から、暴力、暴言、脅迫、侮辱、強要、いやがらせ等が日常茶飯で起きている家庭で生きてきました。そこでは、親が絶対的な権力をもっています。子どもが少しでも意見を言おうものなら、子どものくせに意見をするなと言い、子どもが泣けば泣くなと言い、怒れば怒るなと言います。段々と、自分を信じる気力も失われ、立ちあがる勇気も失ってしまいます。
そのような状態が20年近くあるいはそれ以上続いた方たちに対し、自分を踏みにじった親への恐怖心を持つなということはとても乱暴な話だと思います。
長年にわたって植え付けられてきた恐怖心を持ちながらも、自分の人生を少しでもよくするために勇気を出して今あるトラブルに立ち向かおうとしているのです。
理解まではできなくても、そっとしておいてほしいと思います。
★親を再定義して自分の尊厳を取り戻す★
私は、人は誰でも心から望んで行動を起こせば未来を変えていくことができる、と強く信じています。そして、そのためには、変えられないことと変えられること、それぞれを受け入れることが出発点だと思っています。
生まれてきた時は誰しも、本当は一番愛してほしかった、大好きでいたかった親
その親が大人になった今でも自分を苦しめる
何を言っても聞く耳を持ってもらえない
それは本当に辛い現実です。
自分の親を「毒親」にカテゴライズする段階で心をすり減らしていない方などいないでしょう。
しかし、きちんとこの後も続く自分の人生を生きるために、皆さん、現実をしっかりと受け入れようと努力していらっしゃいます。現実を受け入れて、前に進んでいく出発点として、親を「毒親」と再定義しているのだと感じています。
本来ならば生まれてきたその時から無条件に感じていてよかったはずの自分の尊厳を取り戻すための作業、その出発点として「毒親」という言葉は重要な概念であると考えます。
勇気をもって自分の人生に取り組む方たちを、私は同じ人間として心からリスペクトしています。
一緒に頑張りましょう。