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2019年10月06日(日)

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【毒親解決事例】複雑な家業の財産問題を整理するために親族関係調整調停を利用

♦ご相談内容

3代くらい前から同族で事業をしているご家族のご息女からのご相談。

ご本人は結婚しているが、その家業を手伝っている状況。夫は外で仕事をしているが、障害をお持ちで就業に制限があるため、夫の収入だけで生活していくことは困難であるご様子。

 

ご本人は小さいころから威圧的な祖父及び父親のもとで育った、母から守ってもらうことができなかったという自覚があり、成人してから心身の不調になる。その時に診察してもらったドクターから、幼少期からの度重なるストレスによる複雑性PTSDであるとの診断を受ける。

 

会社内で、両親と顔を合わせざるを得ない状況であるが、それが耐えがたく、すべてを投げ出して安心して生活したいという気持ちを持っていた。一方、自分を信頼してくれているクライアントさんもいるので、すべてを投げ出すというわけにいかないという気持ちもあり、ジレンマに陥り、ますます悩んでいた。また、家業以外の仕事をしたことがないため、他のところで就職してやり直すということも年齢的にも心理的なハードルがある様子であった。

 

 

♦弁護士からのアドバイス

 

面談では、ご本人が健康な生活を送るため、ご本人が父と適切な距離を置くことが必要であると判断しました。しかし、ご本人の収入源が家業であるため、今のままただ距離をおくだけでは、家業を担うことができなくなり、収入を得られなくなってしまう恐れ、また、クライアントの信頼を失い、ご本人の社会的な居場所を失うことになりかねないため、その点を考慮した方法で打開策を考える必要がありました。

 

そこで、解決の糸口を探そうと、家業のことについて色々とヒアリングを重ねるうち、そのほとんとの実権は父が握っているという状況で、ご本人は把握できていない情報だらけということがわかりました。会社組織というわけでもないため、把握できる情報にも限りがありました。そのため、今後ご本人の収入を確保できるような状況をつくるために何かしらの訴訟を打とうと思っても、難しい状況でした。

 

♦ご依頼後

 

交渉するにしても裁判所を利用するにしても、ご自身では対応は難しいということで、ご依頼いただきました。

その後、方法を熟慮した結果、親族関係調整調停の利用をすることにしました。

親族関係調整調停は、裁判所のホームページでは、「親族間において,感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争等が原因となるなどして親族関係が円満でなくなった場合には,円満な親族関係を回復するための話合いをする場」として利用できるものと定義されています。

 

今ご本人が一番求めているのは、収入を確保することと、父との一定の距離を置くことです。ただ、今の状況に至った背景には、独善的な父が支配する家庭環境があるため、そこを掘り下げて話ができる方が解決の糸口が出てくると考えました。また、父との間で合意ができない場合にやむなく訴訟提起をするとしても、そのための情報が必要であるところ、調停の場で父に情報の開示を求めることで、足掛かりをつかむことができるのではないか、とも考えました。

 

調停は家事事件手続法に基づき、出頭義務がありますが、必ずしも相手方が出席するとも限らず、その場合調停で話し合う道は閉ざされてしまうので、まずは出頭をしてもらえるかがポイントでしたが、相手方は出頭し、話し合いが重ねられました。

 

あらかじめ予想していたことではありましたが、ご本人が本当は一番わかってほしかった子ども時代辛かったこと等は、相手方に理解してもらうことは困難でした。ただ、それでも調停委員に理解してもらうことができ、共感的に調停を進行してもらえたこともあり、ご本人としては納得感のある進行でした。

 

また、収入を確保できる道を探りたいという点については、調停における話し合いを経て、ご本人の名義の不動産があることがわかったので、それにまつわる事業をすべてご本人の管理とすることとなり、そこから生活に困ることのない収入が得られる目途が立ちました。父は不満そうではありましたが、弁護士が証拠に基づき作成した書面と、それに依拠した調停委員の説得により、何とか合意してもらうことができました。

 

父と距離を置くという点についても、上記のとおり、ご本人名義の不動産にまつわる事業をすべてご本人の管理とすることで、これまでのように父の言うことを聞かざるを得ないという状況が動いたことで、一定の距離を置くことあ可能になりました。父は納得していない様子ではありましたが、弁護士が医師の診断書等の証拠に基づき作成した書面と、それに依拠した調停委員の説得を受け、以前より干渉の頻度も減ったようでした。

 

何より以前は父に対して毅然とした態度をとることができなかったご本人が、この調停を通して少しずつ自信をつけ、毅然とした態度をとることができるようになったことで、ご本人は精神的に父から徐々にではありますが解放されていっている様子でした。印象的だったのが、初期の調停では弁護士がほとんどを代弁している状況でしたが、だんだんとご本人の発言も増えていきました。

 

 

 

♦弁護士の分析とコメント

 

親族関係調整調停は、なかなか使い方の難しい手段です。例も聞いている限り、少ないです。

 

相手方が出頭しない場合、話し合いができません。また、調停委員を選ぶことができるわけではないため、調停委員との相性が悪かったり、特に、機能不全家族の実態に理解を示してもらうことが難しい調停委員にあたった場合、実りがないばかりか、かえってご本人が傷ついてしまうリスクもあります。

 

ただ、これは親子間に限りませんが、調停という手段には訴訟にはないメリットがあります。訴訟は和解で終わることもあるものの、基本的に対立構造です。終わったらもう二度と顔を合わせなくてよい関係であればいいのですが、そうではない場合、やはり何かしらの禍根が残ります。また、今回のように事業絡みである場合は、クライアントさんの信頼を失うわけにはいきませんから、訴訟は避けた方がいいという考えもはたらきます。

 

時間をかけて月1回くらいの頻度で話し合いを進めるので、じっくりと向き合うことができ、ご本人にとってもちょうどよいペースで進めることができるようにも感じます。

 

今回のケースは、いろいろな好条件が重なった幸運なケースではありますが、法的解決を図ることが難しい問題をたくさんはらんでいる親子問題においては、親族関係調整調停は、一つの有効な手段であるのではないかと考えます。

 

なお、親族関係調整調停は、「円満な」関係を取り戻すための手続きと裁判所は考えています。今回のケースで、父と距離を置きたいというご本人の要望は、一見すると、「円満」とは程遠いように思えます。そのため、この手続きを使うときには、申立書は工夫を凝らして記載する必要があります。そのあたりは、少しずつ弊所においては事例が集積してきているところです。

 

それから、家業に関係したご相談は増えてきております。株式会社であれば、会社法の観点からも検討すべき事項等が出てきますし、本件とはまた別の解決策があるかもしれません。家業の業種によっても、特殊な慣行があったりしますので、変わってきます。いずれにせよ、家業をやっていると、家族の関係が通常よりも密になりますので、その分、問題も生じやすいのであろうと推察します。相続の場面まで持ち越さず、問題に気付いた時から、打開策を検討していくことがよいでしょう。

 

 

 

 

※弊所の解決事例は、基本的にこれまでの色々なケースを組み合わせた事例ですので、特定の方のケースということはございません。また、特定の方のケースに大部分依拠する場合、必ずご本人の了承を得ております。弊所にご相談あるいはご依頼いただいたからといって、そのご事情が外に漏れることは決してございませんので、安心してご相談くださいませ。

 

 

 

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