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2019年10月29日(火)

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【毒親解決事例】親から距離をおくために親族関係調整調停を利用

♦ご相談内容

 

20代前半の女性からの相談。

幼いころから、暴言、過干渉、暴力等の虐待を受けてきた方。

すでに親とは別居し、住民票の閲覧制限もかけ、心身の安全は一応は確保しているが、

親から、勤務先へ連絡が来たり、メールや電話が頻繁にきて、そこで探偵に依頼して居場所を調査することをほのめかしたりという状況で、安心して生活を送ることが難しいという状態でした。

親からの連絡を止めたいということはもちろんでしたが、それにとどまらず、これまでの自分の気持ちを安全が確保された場できちんと伝え、過去との折り合いを自分なりにつけて、未来に向けて前向きになりたいという希望もありました。

 

♦弁護士からのアドバイス

ご相談内容を踏まえると、内容証明の送付による警告や、交渉が第一の選択肢としてあがりました。

 

ただ、よくよく丁寧にご本人のお話を聞いてみると、最終的なゴールは親と適切な距離を置くことであるものの、そこに至る過程では、ご自分の気持ちをきちんと相手に伝えたいというニーズがとても大きいことがわかりました。

 

もちろん、ご自身の気持ちを伝えたところで、理解してもらえる相手ではないということも十分理解していらっしゃいました。ただ、それでも、理解してもらうことは不可能であるということも含めて、相手の反応をきちんと受け止め、前に進みたいというご希望でした。

 

気持ちを伝えたいというニーズも大きい場合、内容証明からスタートする交渉だけではなく、家庭裁判所で行う親族関係調整調停も視野に入ります。内容証明を送ると相手が一気に敵対視し、そこから先、こちらの気持ちを聞いてもらえるような心境に相手がなりにくいということもあります。

 

家庭裁判所の調停は、基本的に調停委員2名が双方から代わる代わる話を聞いて、双方が折り合えるところを見つけるという形で進行されるので、対立構造になりにくいという良さがあります。また、相手がこれまで暴言や暴力をふるってきた相手であることを考えると、家庭裁判所の手続きという制度的な枠組みがある方が、安全に話し合いを進行することができます。

 

一方、家庭裁判所を介する分、調停委員や裁判官に、こちらの主張に理解を示してもらうことができなければ、話し合い自体が難しくなるという懸念もあります。親子の紛争は、夫婦の紛争以上に、個々人の価値観がによるバイアスがかかりやすい分野です。そのため、まずは調停委員や裁判官にこちらの主張をきちんと理解してもらえるよう、説得力ある主張をすることはもちろん、的確な証拠も準備する必要があります。

 

ご相談のケースでは、まずは調停を利用し、万一裁判所においてこちらの主張に理解を示してもらうことが難しい場合には交渉も行うという方針でアドバイスをさせていただき、それにご納得の上、ご依頼いただきました。

 

♦ご依頼後

親族関係調整調停の申立書を一緒にじっくりと作成しました。

親族関係調整調停は、裁判所のホームページでは、「親族間において,感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争等が原因となるなどして親族関係が円満でなくなった場合には,円満な親族関係を回復するための話合いをする場」として利用できるものと定義されています。

 

今回の手続きで、ご本人が一番希望されていることは、まずご自身の気持ちを臆することなく、きちんと伝えることです。なぜ今、親と適切な距離をおくことが必要なのか、そしてその目的を達成するためになぜ調停という手段を必要としているのか、説得的に裁判所に伝える必要があります。そのため、申立書は、ご本人からヒアリングした内容を、裁判所へのプレゼンテーションのつもりで、説得力ある文章として構成することから始めました。

 

ご本人にとっては、思い出すこともとても大変な労力のいる作業です。途中で体調不良になったり、カウンセラーさんの力も借りたりしながら、焦らず時間をかけて、弁護士と二人三脚でじっくりと進めていきました。

 

そして完成した申立書で申立てを行い、期日が指定されました。雑な見方をすれば、ただの親子喧嘩としてしか捉えられかねない内容でしたが、ご本人との二人三脚での作業の成果か、裁判所から調停として申し立てたことについて尋ねられたり、申立書の補正を求められたりすることはなく、とてもスムーズに期日指定まで進みました。

 

その後、第1回期日までに相手方から答弁書(申立書に対する反論をまとめるべき書面)が出され、それをみると、やはり予想どおりご本人の気持ちはまったく相手に伝わっていないということがわかりました。予想どおりではあるものの、それはご本人にとってはつらいことでした。ただ、ドキドキしながら出頭した第1回期日において、調停委員がきちんとこちらの主張に耳を傾け、共感を示してくださったことで、ご本人の不安は大きく軽減されました。調停の場で、自分の主張に耳を傾けてもらえたことで、これまでご自身が感じてきた感情が決しておかしなものではないという自信をもつこともできたようです。

 

また、ご本人にとっては、自分の気持ちを相手が理解することは未来永劫ないのであろうということを目の当たりにしたことで、今後親に認めてもらおうとか、許してもらおうとか、和解したいという期待や希望をもたないという覚悟が決まりました。そのため、きちんと精神的に自立して生きていく出発点ともなりました

 

数回の期日を経て、相手にこちらの気持ちを理解してもらうことはできなかったものの、最終的なゴールとしていた親と適切な距離を置くことは達成することができました。具体的には、今後限られた場合(親が亡くなった場合)以外、一切連絡をしてこないこと、探偵に依頼したり職場に連絡する等の方法を問わず、居場所を探るような行為をしないこと等を、調停調書においてきちんと合意することができました。

 

相手方も調停において交わした合意を守っているようで、今は平穏に生活をされています。

 

♦弁護士の分析とコメント

 

複雑な財産関係でもめているケースのご紹介でもお話したとおり、親族関係調整調停は使い方の難しい手段です。

 

本件においても、申立書の書き方はかなりの創意工夫を要しましたし、最終的にこちらの求めていた合意を成立させることができたのは、調停委員がとても理解のある方であったということも大きいのではないかと思っています。

 

また、本件では、幼少期からの虐待までさかのぼって事実関係を主張し、調停委員から共感してもらうこともできましたが、それはご本人がまだ20代前半という若い年齢であったという点もあると考えています。20代前半であれば、その年月のほとんどを親と一緒に過ごしているので、今起きている不調の原因が親にあるということが、いいやすいように思います。実際、精神科や心療内科の医師と話したり、案件を通じて協力したりする中でも、そのようなことを聞きます。

 

親と別々に生活するようになってからの年月が長くなればなるほど、当然ですが、仕事のことや自分が新しく作った家族との関係で悩んだりと、親以外のことによる悩みも増えていきます。そのため、今起きている不調の遠因は親や生まれ育った環境にあるとしても、直接の原因とまでは言い難くなります。また、世間的にも、大人として成熟していくことを求められますので、年を重ねれば重ねるほど、幼少期の虐待のこと等を主張しても、共感を得ることは難しくなります。

 

したがって、本件では親族関係調整調停が功を奏しましたが、これはあくまでもケースの一つとしてとらえ、ご相談者の目的達成のためにできる手段を調停以外にも色々と模索していく必要があると感じています。

 

弊所では、上記の観点から、調停での解決は難しいであろうと考えられるケースにおいて、1年近くの交渉を続けたことで、最終的に親と適切な距離を置く内容の合意を取り付けることに成功したケースもございます。また別のところでご紹介いたします。

 

親子問題のトラブルについて、親族関係調整調停という手段があるということは比較的広く知られるようになってきましたが、以上のとおり、色々なことに配慮して本当にその手段が適切かどうか判断する必要があります。

事例が集積してきている点では弊所は自信がございますので、ぜひお気軽にお問合せくださいませ。

 

 

 

※弊所の解決事例は、基本的にこれまでの色々なケースを組み合わせた事例ですので、特定の方のケースということはございません。また、特定の方のケースに大部分依拠する場合、必ずご本人の了承を得ております。弊所にご相談あるいはご依頼いただいたからといって、そのご事情が外に漏れることは決してございませんので、安心してご相談くださいませ。

 

 

 

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