2021年10月21日(木)
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- 親子問題コラム
毒親に内容証明を送るときの迷い対処法パート2
パート1では、毒親へ内容証明を送るときの迷いとしては、①自分の内面的なもの、②世間からの目、③内容証明を送った後の人生への不安の大きく3つに分けられることをご説明の上、
①の自分の内面的な迷いについて考察しました。
詳細はこちらです。
パート2の今回は、②世間からの目、③内容証明を送った後の人生への不安について考察していきます。
●②世間からの目●
毒親といえど、自分の親に内容証明を送るとなると、世間から冷たい人だと思われたり、親不孝者と思われたりするのではないか。
このようなお悩みに対しては、少し視野を広げてみることをお勧めしています。
確かに、まだまだ、血縁関係で結ばれた家族を大切にするべき、家族を大切にする人は結婚相手としてもふさわしい、家族を大切にする人は信頼できる、といった風潮が強いことは間違いありません。
しかし、この社会には、いろいろな人がいますし、いろいろな家族があります。2人として同じ人はいないし、2つとして同じ家族はいないわけです。そうだとすると、一般化して、家族を語ること自体が非現実的ではないでしょうか。
愛情あふれた親がいつも子どもに愛情をもって接していて、子どもも親を信頼している家庭もあれば、子どもを殴る蹴るはもちろん、子どもに暴言を吐いたり、一挙手一投足行動を管理することが恒常化し、子どもが居場所をなくしている家庭もあります。幼少期は虐待などの問題がなくても、大人になってから、金銭問題、介護問題でもめたり、相続問題でもめる家庭もたくさんあります。
家族は仲がよいもの、愛にあふれたもの、家は安らげる場所、もちろん、人は誰でもそう信じていたいものです。家族さえ頼れなくなったら、家でさえ居心地が悪くなったら、生きていくのが大変なのは事実ですから。
でも、それはファンタジーでしかありません。現実には、とても多種多様な家庭があり、家が戦場のような人や、家族から尊重されていない人、家にいると病気になるという人もたくさんいます。
だから、きっと、あなたが世間と思っているものはそうであったらよいなというたくさんの人の願望が作ったファンタジーに過ぎないという視点をもっていただきたいと思います。
当然ですが、人は、他者の目を気にして生きています。そのため、それが仮に社会が作ったファンタジーに過ぎなくても、自分が世間から嫌われるのは耐えられないと思う方もいるでしょう。お気持ちはわかります。でも、世間からの目自体がファンタジーなのだとすると、自分の思い通り行動したときに、世間から嫌われるのではないかということも、思い過ごしかもしれません。あなたの行動を応援してくれる人も絶対にいるはずで、そういう人こそ、現実なのではないでしょうか。
少なくとも、弊所では、親に対して内容証明を送ろうと考えている人を、心から歓迎し、応援します。また、あなたが相談するにあたって、応援してくれた人もいるはずです。そういう人こそ、現実です。
パート1でもお伝えしましたが、私たちの時間は限られています。そうである以上、限りある時間を有効に使うため、社会が作り出したファンタジーという目に見えないものに惑わされず、ご自分の人生をよりよくする方に注力していきましょう。
●③内容証明を送った後の人生への不安について●
毒親に内容証明を送った後、親が激怒して事態がさらに悪化するのではないかという不安を持つ方も多いですが、結論から申し上げますと、事態がさらに悪くなるということは可能性として極めて低いです。
この点についての詳細は、こちらをご覧くださいませ。
もう一つ内容証明を送った後の人生への不安として多いのが、親に見捨てられたら、私は生きていけないのではないか・・・一人で何もできないのではないか、という不安です。
今回はそちらについて考察したいと思います。
このようなお悩みを相談された際には、親に見捨てられたら生きていけないという不安は、事実に基づいた不安なのかどうか、一度考えてみていただくことを勧めています。
毒親が支配する機能不全家族においては、親は、子どもに対し、無力感を植え付けます。
もともと、子どもは、親の庇護がなければ生きていけない存在ですが、成長するにつれて、子どもは自分でできることが増えていき、自分の意思を持ちます。1歳でもすでに歩けるようになってベビーカーに乗りたがらない子もいますし、これをやりたい、これをやりたくないと言い出す子もいます。でも、これは将来一人の大人として生きていくために必要な成長です。
健全な親であれば、子どもの成長を心から喜びます。もちろん、親も人間ですから、子どもが自分の意見を聞かないときに怒りを感じたり、危険なことや年齢にそぐわないことでも子どもがやりたがったときに困り果ててしまう、といったこともあります。それでも、子どもの成長は嬉しいものです。
しかし、自分に自信がなく、ありのままの状態では自尊心を保つことができない毒親は、子どもの成長を素直に喜び、受け入れることができません。子どもが成長し、自分から離れていくことは、自分の存在意義が薄れること、自分の自尊心を揺るがすこと、もっというと自分を否定されること、ととらえる人もいます。また、子どもが成長し、親と議論したり、喧嘩することができるようになると、子どもに対して脅威を感じる親もいます。他にも、子どもが思春期を迎え性的な魅力をもつようになると、嫉妬する同性親もいます。
そういう親は、子どもに対し、無力感を植え付けようとします。「あなたは一人では何もできない」、「あなたは勉強ばっかりでお箸より重いものを持ったこともないから、一人では生きていけない」、「あなたの今があるのは全部親のおかげ」、「あなたは体が弱くてかわいそうな子。だから親が甘やかしすぎてもっとダメになった」、「あなたは美人ではないけどまぁまぁ。」など子どもに対してかける言葉は多種多様ですが、子どもに対し、「あなたは無力である」「あなたは劣っている」「一人では何もできない」「親の庇護が必要である」というメッセージを絶えず送り込みます。
子どもは、最も近くにいて、自分を守ってくれると信じている親からそのようなメッセージを受け続けますので、当然、自分は「無力」「劣っている」「一人では何もできない」「親の庇護が必要だ」と思い込みます。
そのため、大人になって社会に出て、経済的に自立しても、自分に自信が持てずにいます。
もうおわかりかと存じます。あなたが今悩んでいる「親に見捨てられたら生きていけないかもしれない・・・」という思いは、今ある現実に基づいた不安なのではなく、長年親から受け続けた不健全なメッセージが息を吹き返しているだけなのではないでしょうか。
あなたが、今、自分の力で生きているのであれば、それに誇りと自信を持っていただきたいと思います。そして、毒親から受け続けた不健全なメッセージに、力を与えないようにしてほしいと思います。
一朝一夕で自己肯定感を身に着けることはできませんが、少なくとも、成長し、自立して生活していらっしゃる以上、毒親からの庇護を受けられなければ無力等ということはありえません。毒親が支配する機能不全家族で生き延びることができたということは、それだけであなたが無力ではないということを物語っています。
以上、毒親に内容証明を送るにあたっての迷いについて、2回に分けて考察してみました。弊所では、依頼内容を固めてからでなければ相談できないということはございません。決断するまでの悩みや迷い、葛藤についてどう対処したらよいかわからないというご相談についても、もちろん対応可能ですので、必要があればぜひ頼っていただきたいと思います。